現状

ジェンダーって?

生物学的、身体的な性別の区分をセックス(sex)と呼ぶのに対して、社会的意味合いから見た男女の性区別をジェンダー(gender)と言います。
例えば「男は仕事。女は家庭」というように考えている人がいます。
しかし世の中にはリーダーシップを発揮して忙しく働く女性もいますし、料理や掃除好きで育児を積極的に行う男性もいます。
ジェンダー差別は、このような「男性・女性はこうでなくてはいけない」といった、社会的・文化的背景による性差別や偏見のことを言います。
特に女性蔑視的な差別が人権侵害を招いている国もあり、問題視されています。

現状

本では、男性は仕事、女性は家庭といった性別役割分担意識調査では、賛成が48%、反対が52%と、約半々の割合で指示されています。この数値は他の国と比べて日本はかなり高いほうです。
※内閣府男女共同参画局、男女共同参画社会の形成の状況より「固定的性別役割分担意識の国際比較」
「男性だから」「女性だから」という前置きがついて、服装や髪型、ファンション、職業、言葉遣い、家庭や職場での役割や責任の分担だけではなく、人間の心の在り方や、意識、考え方、コミュニケーションまでに影響を与えています。

世界経済フォーラムが公表した、「ジェンダーギャップ指数2020(右表)」では、経済、政治、教育、健康の4つの分野のデータから評価され、0が完全不平等、1が完全平等を示しています。
日本は総合スコアで見ると、153ヵ国中121位でした。
なお、各4分野ごとに見てみると、政治分野の数値が一番低い結果となっています。

日本の分野別ジェンダーギャップ指数2020

昨今では、2021年2月に日本オリンピック委員会にて、当時の会長が、「女性の多い会議は時間が掛かる」といった意味合いの発言をしてしまったことで、世間から女性蔑視発言だとパッシングを受けて会長を辞任する、といった事態もありました。

 

 

 

 

ジェンダーギャップ指数2020
ジェンダーギャップ指数2020

 

 

何が原因なの?

原因は様々ですが、主な原因としては下記が挙げられます。

生物学的役割の違い

男女は身体的、行動的に異なる傾向を示されます。
基本的に遺伝子の違いで身体的な生殖器の違いで分かれますし、考え方や行動にも傾向が現れます。
しかしながら、この違いは「遺伝子」のみでは決定されるわけではなく、社会的、認知的、情動的要因などによる「脳の働き」による影響もあると考えられています。

宗教的な問題

キリスト教では神が男性であるというイメージが保持され、イスラム教は女性は男性より身分が低いとされており、女性の価値をないがしろにするあまり、女性への暴力や経済的な自立を妨げる要因となっています。
また大乗仏教では、仏陀は男性であるとの主張が法華経の一節の解釈から生じており、女性は成仏しないが来世に男性として輪廻すれば、成仏する可能性があるとの考えが一部存在しています。
また、ヒンドゥー教のダウリー(結婚持参金)という花嫁の実家が花婿に持参金や家財道具を送る習慣があります。しかしながら、その金額が莫大で、花嫁の家族が払えない場合は、自殺につながるようなひどい扱いを受けることも多くあるようです。
(現在ダウリーは法で禁止されていますが、インド北部では風習が今も色濃く残っているそうです)

伝統的な社会構造・風習

日本も強い傾向にありますが、世界的にも家事は女性がするものという考えがあり、こうした習慣が女性の社会進出を妨げる要因になっています。
特に貧しい国々では男女の役割分担がはっきりしており、女性が薪や水の運搬、料理、育児など全ての家事の負担を担うので、それだけで1日が終わります。
そのためこのような地域では女性は学校教育や職業訓練を受けられず、雇用の機会があっても働く時間が作れない問題が生じています。
逆に男性は社会に出て稼ぐことが使命とされ、その能力のみで男性としての価値を判断されるといった傾向も強く残されています。

家庭内・家庭外での教育の欠如

前述でもありますが女性は家事、男性は仕事といった押しつけが当たり前のようになっていたり、違和感なく受け入れている家庭もあります。更にそれは子供にも影響します。
男の子・女の子はこうしないといけないといった刷り込みが強く行われることで、逆に差別や偏見が生み出される温床になってしまうことがあります。
こういった性区別に疑問を持つ機会=教育がないことが差別や偏見の傾向を高めてしまうことに繋がります。

ジェンダー不平等の問題点

  • 政治・経済共に重要な意思決定への女性の参加率の低さ
  • 男女の賃金格差
  • 社会的役割に関する偏見
  • セクハラ・モラハラ問題
  • LGBTなど少数派への差別・偏見

解決への動き

日本は他の国と比べるとまだまだ遅れていますが、少しずつ取り組みも増えてきています。
企業では女性メインのチームや女性を幹部社員に登用する動きや、女性のみのチーム編成で女性向けの商品をつくったり、育児を行う男性にも育児休暇が取得できる仕組み作りが始まっています。

政治の分野でも、まだ人数は少ないものの、一昔前と比べれば女性の議員や大臣、知事も珍しくなくなってきています。

まずは一人一人がジェンダーによる差別や偏見について、改めて知ることが大切です。
同時に、一人一人の個性を認め、活かしつつ、それぞれが助け合える環境を身近なところから築いていきたいものです。