現状
沖縄の現状
沖縄企業の残業時間
沖縄労働局の2019年度の調査によると、沖縄の企業の違法残業がかなりの数に上っていることが明らかになりました。
2019年度の1年間に、嫌疑がかかる156の事業所に監督指導したところ、以下のような労働基準関係法令違反が確認されました。
項目 | 該当事業所数 |
---|---|
労働基準関係法令違反 | 134事業所 |
(時間外労働に関する違反) | |
違法時間外労働 | 98事業所 |
(過労死ラインである) 月80時間を超えている事業所 |
33事業所(33.7%) |
月100時間を超えている事業所 | 18事業所(18.4%) |
月150時間を超えている事業所 | 6事業所(6.1%) |
(時間外労働以外の違反) | |
過重労働による健康障害防止措置の未実施 | 42事業所(26.9%) |
賃金不払い残業 | 38事業所(24.4%) |
(業種別 違反事業者) | |
商業 | 33事業所 |
接客娯楽業 | 19事業所 |
建設業 | 16事業所 |
全国と比べて、沖縄は労働基準関係法の違反率が高いのが現状です。
上表の調査は、飽くまでも労働監督署が調べた範囲の156事業者内の調査であり、沖縄県の全ての事業者を網羅した調査ではありません。
しかしながら、この調査はあくまでも氷山の一角であり、他にも労務環境に関して問題を抱えている事業者が多く存在しているのが現状ではないでしょうか?
ちなみに沖縄労働局によると、定期健康診断で異常を指摘される労働者の割合が沖縄は9年連続でワーストです。
さらに、65歳未満の死亡率が全国平均を上回っています。
沖縄労働基準部監督課によると、「沖縄は中小企業が多く、都市圏に比べ労務管理がおろそかになっている」といった傾向を指摘しています。
何が原因なの?
残業文化と過労死
1970年代頃から、「Made in Japan」が世界的に評価され、需要が急激に伸びました。それに伴って追いつかない供給をカバーし、コストを削減する目的で生まれたのが、「残業」です。
人を雇うより便利だと安易に判断する経営者が多く、ムダであっても努力が美徳という生真面目な日本人の性格が悪い追い風となり、「残業文化」は日本の悪習となりました。
時を同じくして、70年代後半から中小企業の管理職層で心筋梗塞を発症する人が増え、80年代になるとサラリーマンが突然、心筋梗塞や心不全、くも膜下出血、脳梗塞などの疾患で命を失ってしまう「過労死」という言葉や、精神的に病んでしまう「うつ病」といった言葉が浸透する時代となりました。
88年には、職業病に詳しい専門家が中心となって「過労死110番」が設置されると、電話が殺到したそうです。
それでも残業は増え続けました。
90年代になっても企業が手をつけたのはコスト削減でした。「カネ」が優先され「人」が酷使しされ続ける傾向が続きました。
残業でカバーできない部分は賃金の低い非正規雇用を増やしたり、外国人労働者でまかなってきました。
グラフをみても分かるように、2000年以降も認定されているだけでも「平均で毎日1人が過労死で死んでいる」という状況が続いています。
そんな中、2015年に大手広告代理店の電通の女性社員が過労自殺した事件が起こり、裁判に発展していったことによって世間の目もようやく労働環境問題に焦点が集まりました。
日本国政府も、2013年に国連から長時間労働に対しての是正勧告がなされてきた背景や、ワークライフバランスが保てないことで結婚しない人たちも増え、出生率が年々低下して労働人口がどんどん減っている現状、および労働生産性がOECD主要7カ国で最下位であることへの対策として、2019年から「働き方改革」による課題改善の取り組みがなされています。
解決への動き
働き方改革
労働問題解決への動き
残業文化や過労死などの背景からの改善の国の取り組みとして、既存の労働基準法に加えて、2018年に成立した「働き方改革関連法」が施行されました。
労働基準法にて、法定労働時間は原則として1週40時間、1日8時間までと決められています。
これを超える労働時間は残業であり、労働者側との協定(36協定)を交えて残業時間の上限(1ヶ月で45時間以内、年間360時間など)が定められています。
また、企業は別表にあるように法定時間を超えた分の残業代には割り増し賃金を支払わなければなりません。
法律を守らない企業への罰則も強化され、企業は残業をさせることによる負担やリスクが大きくなることになりました。
過労自殺で裁判となるような事件もあり、労働基準法に違反しワークライフバランスが取れていない企業は「ブラック企業」と呼ばれるようになって、若い世代の就職への意識も大きく変化してきました。
ブラック企業は人材の定着率が悪く、社員のモチベーションが上がらず良い人材が集まらないため、生産性が低下していくという悪循環となり、いずれ衰退していくことを余儀なくされています。
世界でコロナによるパンデミックが起こったことで、労働スタイルを改める契機にもなり、持続可能な健康経営をするためには、労働環境の見直しは当たり前の時代となったと言えるでしょう。
沖縄でも早急な健康経営、働き方改革が求められています。